日本の「これから」

楽太郎です。

昨今のニュースを俯瞰して思うのは、私が以前「グローバリストの分裂」という記事の中で、「アメリカは第二ハイテクバブルを引き伸ばして延命するつもりではないか?」と書きました。

これに関して、実際にそうなりつつあるニュースが続いています。
先日、「オラクル」が社債を180億ドル(2兆6800億円)発行し、AI事業の需給に備える投資を行うと発表されました。
また、実績がそもそも疑わしい「コアウィーヴ」が、OpenAIとの契約を224億ドルに拡張するそうです。
さらに業績低迷が続くIntelには先日、NVIDIAの新型半導体の共同開発の話とAppleへの出資要請、ソフトバンクグループからの巨額投資と、立て続けに動きを見せています。

これら「AIブーム」の胡散臭いところは、世に喧伝される「投資」「契約」の規模は超大型なのですが、「収益」「営業利益」に関する景気のいい話は一切出てこないということです。
つまり、ジャブジャブに資金を投入して、「それほど盛り上がっているように見せる」ことで投資を呼び込み、裏では自社株買いなどで株価操縦を行い、株式好調を装いバブルを肥大化させているのです。
「張子の虎」とは言いますが、それで通用してしまう世の中も、カスカスのハリボテになっているということではないでしょうか。

「オラクル」という会社は、プログラミング言語の「Java」の開発企業として有名ですが、実はSQLデータベース環境の保守やセキュリティに関するシェアでは、Microsoft共同のSAPと対をなす寡占企業です。
だから一般的には、IT系のシステムエンジニアしかいまいち企業価値がわからない会社なのですが、なぜかその企業が「AI事業」に本格参入するために多額の出資を募っています。

オラクルは長年Microsoftと競合してきた会社であり、どちらかというとMicrosoft亡き後のシェアを狙っているようにも見えます。
ただ、オラクル自体は一般的にサービスを表立って知られている会社ではないため、どうやって個人投資家を釣るつもりなのか、そこはまだ判然としません。

おそらく、中国から事業譲渡された「TikTok」の運営をオラクルが担うことになり、さらにSNSの寡占を強めることでアメリカ政府はハイテク業界のさらなる強化を目論んでいるのでしょう。
というか、アメリカ大統領が中国共産党トップに「アプリを売ってくれないか」と話に行く世界線は世も末という気もしますし、どれだけアメリカ株式市場が「IT独占状態」に依存しているかが判然とするニュースです。

もはや、「アメリカ経済はITにしかインセンティブがない」と白状しているようなものではないでしょうか。
いずれにしろ、統計局局長を大統領直々にクビにする状況で出される経済データにどれほど信憑性があるかわからず、「ある条件を除くことで」数字を良くするトリックなどはいくらでも思いつくでしょう。
だから、実態経済と公式統計は今後ますます乖離していくと思います。

先のIntelには「国有化」の話さえ出ており、一般大衆には馴染みのないオラクルの台頭、なぜかアメリカ企業のケツ持ちに回るソフトバンクと、どうもマグニフィセント7の欠員を埋める交代要員が出てきた、という見方はあながち間違いではなさそうです。

この顔触れを見ても、もはやAIで何がしたいのかわからない企業が、何ができるかわからないAI事業に、意味のわからない規模の莫大な投資をする、という不可解な様相を呈しています。
ソフトバンクグループの孫正義会長は、ずっとMicrosoftのビル・ゲイツのケツを追っかけてきた人ですから、今にやらかしそうなMicrosoftの尻拭いをさせられているのは見て取れます。

WEFとしてのゲイツ氏は、おそらくグローバリスト界隈から村八分にされかけていて、彼の子飼いである孫正義氏は、そのフォローのために収益見込みのない「AI投資」という名目でグループが傾きかねない規模の投資を促され、リカバーのつもりで散財させられているのではないかと思います。
ソフトバンクは傘下のYahoo!をアメリカに売り払った時点で、米国ハイテク連合の仲間入りをしたことになっているのでしょう。

私がITベンチャーに勤めていた頃から、IT業界は大富豪をカリスマとする「シリコンバレー」を母体として新興宗教に近い雰囲気があると思っていましたが、わりかし間違いないかもしれません。
孫正義氏に「仁義」があるとしたら、まるで任侠の世界だと思いますが、ソフトバンクが吹き飛んだら楽天グループの三木谷社長が一体どういう顔をするのか、私は個人的に気になります。

ちなみに、AppleはIntelへの出資に乗るかというと、乗らないと思います。
Appleが自社の投資判断を下げてでもAI投資を拒否し続けたのは、今回のハイテクバブル後の状況が大方予想できているからだと思います。

Intelが国有化されても、資金規模で新技術の開発が進むという保証はどこにもなく、アメリカの軍事企業のように中抜きと企業努力を無視した水増しの受注で、さらに「使い物にならなくなる」のは目に見えています。
そんな藪蛇に大金を払わされるのは、時価総額だけが膨らみ、業績が低迷しているAppleには重い足枷になるはずです。

Appleはもはや自社だけが大災害を乗り切る防災に頭がいっぱいで、だからこそ新製品の開発もお座なりのまま、機種を「薄くする」だけでお茶を濁し、投資家の溜飲を下げてもらう腹積りなのでしょう。
ただ、私はやはり何だかんだで最後まで生き残るのはAppleだけだと思っています。

AmazonとGoogleに関しては、事業規模よりも「軍事技術」としての個人データと地理データの有用性が評価され、以後は「裏」の需要で支えられていきそうな気もします。
しかし、その国家安全的リスクがきちんと認識され始めれば、一般国民に忌避感が生まれ「データ更新」に支障が出るにつれ、「軍事技術」としては使えなくなるかもしれません。

だから「寄らば大樹の陰」と、猫も杓子も米国寡占企業のサービスに依存する世の中は、考えものではないかと私は思います。

さて、今回は「日本のこれから」について考えたいと思います。

上述の通り、アメリカ経済はあまりに窮してなり振り構わなくなっており、国債価格の下落とドル安基調で「ハイテクバブル」を炊き、投資を呼び込まなくては国家財政を埋め合わせることができないレベルに来ています。

昨今の日本の「物価高」とそれに伴う不況は、アメリカ経済に引き摺られて発生しているものです。
なぜなら、日本がここ30年空念仏のように唱え続けてきた「円安経」によって、輸出系企業だけが潤い国民経済全体が沈む、という環境が保守されてきたからです。

「円」の適正価格としては1ドル70円ほどではないかと言われているため、どれほどこの円安傾向が異常かわかります。
この円安は、日銀が「円が高くなりそう」という時には必ず円売り介入をしてきた結果であり、政治的に、意図的にもたらされているものです。

後でまた解説しますが、日本が円安であることによって円を元手にしてドルを借りる、いわゆる「円キャリートレード」によって米国株や国債が買われます。
投資家が安い円を通してドルを借り、国債などの金融商品を買うことで、レートの差額分を儲けることができるからです。
円安に相対してドル高になることにより、外国投資に収支を依存するアメリカ政府は莫大な赤字を出しながらも何とかやってこれたのです。

しかし「円キャリー」の仕組みが壊れると、経済のギアが一つ動かなくなります。
すでに米国債安に伴う高利回りの状況で、赤字が拡大している中、米ドルが下落基調にあり相対して「円高」になりつつあります。

「円高」になれば対ドルレートが上がるので、円で買える外国の品物やサービスは相対的に安くなります。
そうすればエネルギー供給不足から始まるインフレに関係なく、日銀の金利引き上げを問わず国民消費は復活し、物価高不況は収まるでしょう。

ただ、そうなると「困る」人たちがいるから、日銀は玉虫色の対応をしながら優柔不断な顔をしているフリをしているのです。
実際のところ、日銀は「日本を良くする方針」を出すことができません。
何故なら、日本が復活するということはアメリカ経済ならず「西側諸国の経済全体が沈む」からです。

昨年2024年の8月、「AIバブル崩壊か」と言われるほどの米国株大暴落が起きました。
この時、引き金となったのは「円キャリー取引」の巻き戻しによるものでした。
あるきっかけで急激な米国債安になった日、投資家たちは損失を抑えるために円を買い戻し、その動きがドル安に繋がり拡大して株式にまで影響したのです。

円高になれば、対ドルで国債を購入している投資家は国債安とドル安が合わさり、二重の損失を被ることになります。
つまり、「円高=米国経済崩壊」なのです。
だからアメリカ経済を保守するために日本の円安は不可欠な条件であり、むしろ日本が「復活」すればアメリカに連れ立って西側諸国も、アメリカの子飼いの中国も沈んでしまいます。
そんな「裏切り」を、アメリカの下僕であり西側陣営の一員たる日本ができるはずがありません。

アメリカの「核の傘」で守られており、自分では「名誉白人」と思い込んでいる日本という国が、国民を犠牲にしてでも西側追従をするのは、立場として仕方ないような気もします。
かと言って、国民全体に「日本独立」のような機運はさらさらなく、どちらかというとiPhoneで YouTubeを見るような生活が続いて欲しいでしょう。

これに関して、私は「どうするべき」という意見は持っていません。
日本人の一人一人が自分たちで国のあり方を考え、決めていくべきでしょうし、私がどうこうしようと思って何とかなることでもありません。

ただ現在、米国経済の悪化に反比例して日本の株価は堅調に伸びており、この好調さはアメリカにとって今後は脅威となるでしょう。
ゆえに、日本が「円安不況」で沈んでいる間は、アメリカはバブルを噴かして好調ぶりをアピールしていられるのです。
だから政府日銀は、アメリカを助けるために円安にしなければならず、どうせなら株高基調も抑え込みたいはずです。

そうしてマゴマゴしているうちに、どんどん物価高は進み、日本の不況は進行していくと思います。
そんな、政治も社会的主導権も奪われた国民にできることは、アメリカ経済がぶっ潰れるまで楽しく耐えきることだと思います。

逆に言うと、アメリカ経済が沈む時は日本が浮上する時です。
よく考えてみれば、この30年日銀が徹底した円安と金融緩和によって、企業の内部留保は増えてゾンビ企業が減り、度重なる増税で国家財政はむしろ黒字になりました。

逆に考えるとバブル崩壊後の日本は、財政健全化の等価交換で国民が貧しくなったということです。
とは言え、まだまだ日本人はポッと出のVtuberに投げ銭できるくらいには裕福なのです。
賃金は上がらず、物価高とは言え一つの商品が100円から300円上がった程度で、日常生活としてはおかずが減ったくらいのダメージで一応は済んでいます。

アメリカでは、卵1パックが6ドル(800円)程度ですし、ロシアでは卵を買うために行列ができるそうです。
他国と比べてもという感じですが、事実として日本経済にはまだまだ体力はあり、しかも財政的にはどんどん良くなっているのです。

これはむしろ、世界経済崩壊を見越して30年準備をして、日本の復活を待っていたように見えないでしょうか?

当然、そんなセコい財政再建のために若者が非正規雇用に流れざるを得ず、家庭を持てない中年が増えたことで、少子高齢化と経済衰退に拍車が掛かったのは言うまでもありません。
それでも、日本が円高になり輸入品の価格が下がるだけで国民の生活はグンと楽になるくらいには、まだ経済的に大した問題のない社会なのです。

そして、この不況下でも上昇基調にある日本経済の底力は相当なもので、日本経済の堅調が世界に知らしめられれば、アメリカやEUに流れる諸外国の投資が日本に流れることも容易に想像できます。

もし、「ハイテクバブル」を噴かしてS&P500を連日最高値にすることで、アメリカ経済が成長軌道に乗り財政も健全化していくなら2020年にはもう始まっているので、既に何らかの結果は出ているはずです。
それにも関わらず、統計を正直に出せば大統領が怒り出すような世の中ということは、「バブル」に経済の浮揚効果など皆無であることを証明しているのではないでしょうか。

今、米国ではトランプ関税のダメージを民間企業が吸収しているので、消費者に及ぶ範囲は限られています。
しかし、いつまで金融機関の融資に頼れない中小企業が関税負担に耐えきれるかはわかりません。
そして、おそらくアメリカ経済崩壊は時間の問題であり、あと1年は確実に持たないでしょう。

エコノミストの増田悦佐さんの仰るように、来年2月あたりが関の山でしょうが、私はもっと早いのではないかと思います。
しかもトランプ大統領の横暴が、想像を遥かに超える不確実性をもたらしているのもあります。

私は経済評論家でもありませんし、単なるスピリチュアリストもどきの絵描きにすぎません。
ここでスピッたこと全開で言うなら、日本の「失われた30年」は、日本という国家の「負のカルマ」の返済期間だったのではないか、と思います。

我が国が90年代初期の不動産バブル崩壊後、「豊かさ」を追い求めながら豊かになれなかったのは、むしろ「豊かさだけを追い求めた」高度経済成長からバブルに至るまでの、拝金主義旺盛な日本人に対するカルマのような気がします。

日本の宗教的・政治的問題の中心にあった在日系の組織も、かつて日本が朝鮮半島に行った対外的侵略のカルマと考えたら、妙に納得してしまう部分もあります。
中国共産党の影響が強い今も、かつて我が国が中国大陸でしてきたことを考えれば、文化的に政治的に、そう言う目に遭うのも決して一方的とは思えないのです。

今、外国人の就労には国から補助金が出ており、一人当たり80万円が降りるそうです。
主に東南アジアの人々が多く、彼らも日本で安い賃金で働かざるを得ず生活も大変でしょうが、彼らの出身国は大日本帝国占領下の国々とほぼ一致します。

そして円安でインバウンドが流行り、外国人が国内旅行をすると「日本の良さ」に気づくでしょう。
それは日本が、世界に土下座外交をする以上の好感度を海外に与えていることになるはずです。
それは「善のカルマ」の蓄積であり、いわゆる「」というものです。

日本がこの30年をかけ、おそらく2000年に及ぶ国家的カルマを返済してきたのは、来るべき時代に備えるためだったのかもしれません。
その返済の痛みに耐えながら、それでも日本人はまだ前向きに進みつつ、発展の余地も残しながら着々と未来を築いています。

それに対して、アメリカという国はどうでしょうか。
戦前どころか新大陸に移住し、白人が先住民を殲滅し、外国を侵略しては奴隷として使役し、彼らの犠牲の上に繁栄を築いてきた建国後250年、未だに何一つ変わっていません。
そこにカルマという借金があるとしたら、彼らはまだ一銭も払っていないのです。

もし彼らが「カルマ」を返済するとしたら、どれくらいの期間で、どれほどの規模になるのでしょうか。
簡単には想像しにくいレベルです。

日本が「普通」のあるべき形に戻るだけで、アメリカが依存する「円安」と「株高」というトリックは簡単に解けてしまいます。
それくらい今は脆弱になっているのが、「戦争」を輸出し「侵略」を国是としてきたアメリカという「世界帝国」のなりの果てなのです。

私には、どう考えても崩壊は時間の問題としか思えず、日本人が耐えているだけで自ずと「勝ち残ってしまう」仕組みになっているのではないでしょうか。

仮にアメリカが沈み世界が溺れる中で、日本だけが平気な顔をしていて、それほど世界各国から反感を買うことがあるでしょうか。
プロパガンダで「反日教育」を施されているとか、そういうのは抜きにしてもです。
むしろ日本がアメリカに踏みつけられてきたのは世界が知る事実であり、日本はコツコツと海外に対する慈善事業も行ってきました。

世界経済が沈み混沌とする中で、日本だけが「経済的にマシ」に見える状況も重なり、どんどん諸外国からの信用度が高まっていくのは明白ではないでしょうか。
だから私は、日本の未来に対して悲観をしていません。

しかし、外国人労働者に回してもらっているような、これまでの経済規模を維持することはいずれ不可能になるでしょう。
経済の枠組み自体が改まる必要性は変わらず、その後に持続可能な社会システムをどう再構築していくかが、むしろ鍵になってくると思います。

おそらく、次の時代のテーマは「分散」になるのではないでしょうか。
これまで、「帝国」や「大企業」のような「集中」がトレンドだった世界は、巨大化しすぎた権力とシステムにより、自壊しつつあります。
その前時代への反省として、これからの「風の時代」に相応しく、分散型で低リスク、小規模の多様性社会へ向かっていくのだろうと思います。

そう考えたら、今の行き詰まりを見せる文明は逆の方向を向いているように見えます。
しかし、その時代を見据えて動いてきたのが「日本」だとすると、出口は一つしかありません。