楽太郎です。
常日頃、Bloombergを新聞端の4コマ漫画並みに面白く読んでる私ですが、本日付の本誌も大変勉強になりました。
まず、司法当局に「Google Chrome」は独占禁止法違反とされ、それでも事業売却が「不要」となったから株価爆上げ、というのはどうも胡散臭い話です。
Chromeの買収にはAI検索サービスを手掛け、これまた生データ引っこ抜き疑惑があり、日本の新聞社と係争中のPerplexityが手を挙げていましたが、新興企業を次々と潰してシェアを確保してきたGoogleですから、色々と事情があったんだろうなと思います。
また、「Gemini」の需要が伸びたとされますが、Chrome始め、サービスにGeminiを抱き合わせで実装すれば、関連サービスの伸びをAI事業の伸びに転嫁しても理屈としては通ります。
また、もし本当にNVIDIAとの架空取引が行われているとしたら、Geminiを含むクラウドサービスも取引先がクラウドサービスの「購入」という形にして、利益に計上している可能性もあります。
NVIDIAとの架空取引説においては、NVIDIAは工場を持たず、外部企業に製造を委託するファブレス企業なので、取引には現物の納品が伴いません。
ゆえに、実際の流通がなくても、帳簿上では「取引」があったことにできる仕組みです。
このAI事業の増収に関しては、どうも「いつも通り」の仕組みを使ったのだろうという印象です。
「いつも通り」と言えば、他の記事で「マスクCEOがテスラの自社株買いをしてテスラ株7.5%上昇」というのも非常に胡散臭い記事です。
テスラは万年赤字企業で、国絡みの補助金がなければ企業維持さえできない体質であり、テスラが何かと話題の絶えないマスク氏をCEOに引き留めておきたいのは、各国の公金を引っ張ってこれるマスク氏の人脈に頼らなければ、企業が存続できないからです。
そこで杜撰な生産管理で不評の絶えないテスラの株安傾向を誤魔化すために、マスク氏が個人で10億ドルの「自社株」を購入したことで、「CEOが株を大量購入するくらいなら、株はこの先上がるという自信に違いない」と、連動して株価が上がったそうです。
これは、投資家には申し訳ないのですが、論理が破綻しているように感じます。
そもそも、CEOの自社株買いがなぜ「インサイダー」にならないのかの根拠も曖昧で、どうも株式市場はインサイダーそのものを公然の事実として容認している気配があります。
仮に株価が低迷しているから「テコ入れ」のためにCEOが自社株買いをしていると考えたら、どうでしょうか。
株価は下がったら誰かが買えば値上るのは当然で、マスク氏が1500億円分の株を購入すれば、その分時価総額が上がるのも当たり前です。
Bloombergだけではないですが、マスコミの出す記事は「前提から結論までが飛躍する」傾向があり、何となくニュースを見ている人をミスリードする論法をよく取ります。
大衆なんてその程度だ、と思われているのかもしれませんが、最近のニュースはそもそも「前提」自体がおかしく、結論もロジックもおかしかったりするので、全文通して支離滅裂だと感じることも多いです。
あ、Bloombergでも日本のニュースを確認できますが、私は日本関連の情報は話半分で読みます。
日本の元栓を握っているエリート層の元締めはアメリカの超富裕層なので、大本を辿ればアメリカが変わらなければ日本は変われないと私は思っています。
まあ、勇気ある人がうっかり我が国の保有量世界一の米国債を売り浴びせて、日本おろか世界を救う救世主になってくれないかな、と思っていたりしますが。
さて、今回のテーマはその米国株景気を支える「AIバブル」についてです。
先ほどの「米国債を売れば日本は世界を救える」という主張は、エコノミスト・文明評論家の「増田悦佐」さんの論説の受け売りです。
私は同氏の経済学的知見を底本にしており、データに関しても大部分は増田さんからの出典を参考にしています。
9月1日付で新著「余命半年の米国経済(ビジネス社刊)」が発売されているので、私も後日購入しようと思います。
増田さんは「余命半年」と仰られていますが、私は半年どころかあと1.2ヶ月で株式大暴落があると踏んでおり、どの時点で「死亡宣告」されるかによると思います。
ただ、今回のバブルはこれまでと違い、発生から仕組みに至るまで全て人工的なバブルだと考えているので、「バブル崩壊」も既に織り込み済みのはずです。
ゆえに一度崩壊が起きたら、一度や二度の一時的な回復は見せるかもしれませんが、そのまま一気に崩壊しきると思います。
増田さんがよく仰るのは、「1946年のロビイスト規制法とは、政・官・学・財・民による贈収賄の合法化である」という説です。
政治家に賄賂を贈るだけで、曲がりなりにも自由競争の市場で企業戦略がそこまで上手くいくのか、という気持ちもありますが、実際にMicrosoftやGoogleなどのビッグテックだけが反トラスト法をすり抜けるのを見ると、どうしても嘘とは思えません。
カリフォルニア州で世界に先駆けて成立した「AI関連規制法」もシリコンバレーのお膝元の地域で成立した法案であり、これも胡散臭い気がします。
すでに「Gemini」や「ChatGPT」の先行者利益にありついたビッグテックは、あとは自社サービスに不利でない形で自社に合うコンプライアンスを整えれば良いはずで、後陣の新規AI開発企業が規制法に引っかかってシェアを奪い取れないようにする下地は完璧に出来上がったわけです。
アメリカという国が、なぜここまで露骨に10社ほどの大手企業に肩入れするかと言えば、これらの企業が政治家に渡す賄賂の金額が飛び抜けているからでしょう。
また、実はアメリカの実態経済は相当悲惨な状況にあり、ロビイング資金の豊富な業界以外の産業全体が、ここ数十年沈み続けています。
つまり政治家に贔屓にしてもらえるような業界は、ハイテクや製薬、金融や軍事など特定の数分野だけに限られるため、そこだけ資金が循環し、他の業界はこぞって冷遇され続けるのです。
そして、その実態経済の悲惨さを誤魔化すために、労働統計局のデータの集計法を恣意的に変えてわざと不精密にしたり、公表間隔を開けるなどの措置が行われようとしています。
だからアメリカの公式発表は中国並にアテにならないと私は思っているのですが、盛った分を差し引いても決して良い状況ではないのが見て取れます。
経済学の初学者でも、教科書通りにアメリカから「資本逃避」が起き、それも最終局面であるのはわかります。
冷静に見れば、現在国債がどんどん値下がりし、比例して金利が大幅上昇し、本来なら通貨スワップにより恩恵をもたらすはずのドル高が崩壊し、他国の通貨よりも安くなっています。
これまで国債を買って利回りで収入を得ようとする投資家は、逆に国債を持っていれば持っているほど含み損が増えていきます。
だからどれだけ米国政府が金策に困って債権を増発しても、投資家からするとそんなリスクは取りたくないから国債安がどんどん進みます。
ただ、それでは外国からの投資に経常収支を依存しているアメリカはやっていけません。
債権、通貨がダメなら、あとは株式に頼るだけです。
けれど、ガリバー企業以外の産業がほぼ全滅したアメリカ市場で、呼び水となる成長産業もやはりガリバー企業以外ない、ということになります。
しかし、すでに世界でシェアを取れるだけ取ってしまい、技術的にも営業的にも頭打ちになりつつあるマグニフィセント7にとって、何とか世界中から投資を呼び込む「口上」が必要になってきます。
それが、2022年に一度NVIDIAを始めビッグテックが軒並み株価を下げた「第一次AIバブル崩壊」の折、まだ技術的に未熟で権利的にも安全性にも検討の余地のある「生成AI」を早々にリリースする必要性に駆られたのではないでしょうか。
それが2023年、OpenAIの「ChatGPT」リリースを皮切りとした現在のハイテクバブル(第二次AIバブル)です。
正直、生成AIも権利問題を全て払拭し、安全性やコンプライアンスに基づき、地味なところから信頼を得ていけば、着実に成功したサービスかもしれません。
しかし、全世界のネットからとりあえず一頻りデータを回収し、著作権が明らかに定まっているデータも取り込み、「フェアユース」という強弁と共に、無理にサービスへの実装を推し進めました。
「需要」よりも先に未熟な形での「供給」が来たからこそ、宣伝は派手でも実際の経済効果が全く伴わない、という歪な状況を作り出しています。
しかし、アメリカの超富裕層で構成されるグローバリストが「白」と言えば「白」となる世の中、アプリとして課題しかない生成AIも政治に組み込まれると、採算の合いそうにない再生可能エネルギーやEVのように「国策」として強権的に推進されることになったのです。
そういった「金」の集まりそうな所には、補助金目当てに群がってくる人たちもいます。
「国策」としてべらぼうな公金が各所にばら撒かれると、その公金で潤った業者は事業を推進する政治家にキックバックを施すでしょう。
つまり、利権にとっては技術の完成度、需要など関係なく、金が集まればそれだけで目的を果たせてしまうのです。
特にアメリカは中間層の存在しない国となって久しく、国を動かすのは政治に献金が可能な層だけです。
貧困層も取り込んで当選したトランプ大統領も、今では貧困層切り捨て、富裕層優遇政策に舵を切っています。
もはや「金持ち」以外の国民の声は耳に届かない政治の世界だからこそ、何でもアリの状況になっています。
現在のS&P500の好調にも、実はカラクリがあります。
冒頭に上げた企業経営者の「インサイダー」や自社株買いによる「株価操作」、また商法として「循環取引」が違法ではないなど、ルールとして不健全な環境であるのは言うまでもありません。
S&P500採用銘柄の資産の内訳が不透明すぎるのも問題で、「無形資産」とされるものには「CEOが会社を離脱して新会社を設立した際に予想できる企業価値」も含まれており、そこまで言ったら何でも付加価値にできてしまいます。
そこで判定した企業価値が時価総額に加算され、インデックス投資で業績に関係なく資金が流入し、自社株買いで価格も吊り上げ、FRBからマネーサプライ供給を受け、その上に独禁法も知財法も循環取引も見逃されるのですから、どうやっても株価が上がるのは当たり前なのです。
ただ、Bloombergのような提灯記事ばかりのニュースを読んでも、「ふーん」くらいに思うレベルの読解力なら、純粋に「アメリカの景気は良さそう」と錯覚してもおかしくありません。
むしろ、無垢な大衆にそう錯覚させて投資を呼び込むことで、アメリカは財政赤字を埋め合わせようと必死なのです。
これまでの歴史上、技術革新というのは蒸気機関車や自動車、電話やテレビ、携帯電話からスマホまで、新製品がプラットフォームとなり、派生的に需要が創出され、経済的な互恵関係を発展させながら普及するものでした。
しかし、鳴物入りで登場した「生成AI」に関してはどうでしょうか。
導入した企業が軒並み実装を取りやめ、使えば使うほど企業リスクを高めることが周知されつつあります。
GoogleのGeminiに至っては、中学生がスマホで同級生のディープフェイクを作るのに最適なアプリで、あらゆる生成AIも著作権作品を取り込んで同等の作品が出力されてしまっても「AIが出力したものだから著作権侵害にはならない」というロジックが成立してしまいます。
こんなデタラメは、少なくとも15年前の世界では通用しなかったでしょう。
しかし今では、いくら声を上げてもこの強弁が正当化される世の中になってしまいました。
それは世界覇権国であるアメリカが、自国の放漫な運営の末に国家存続すら危うい状況にあるからであり、一方的な報復関税も、外国から無理矢理引っ張ってきた融資案も、どう見ても戦争犯罪であるイスラエルのパレスチナ侵攻への全面支援も、全てアメリカという国がなり振り構わぬ、余裕を欠いた状態であることの証明ではないでしょうか。
だから、アメリカという没落寸前の帝国に、引導を渡すべき時が来ています。
しかし、そこまで強く出られる国があるとは思えず、やはりアメリカは散々世界中を引っ掻き回した挙句、勝手に沈むことになるでしょう。
その時、中国共産党とアメリカ政府が懇ろの関係であり、そもそも「新冷戦」は茶番だったと明らかになるはずです。
中国共産党の資産は、実はアメリカが握っています。
中国経済はすでに破綻寸前でありながら、アメリカに貿易面で有利な状況を作ってもらっているために破綻を免れています。
中国とアメリカが世間で言うように対立していると思う方は、1972年にニクソン大統領が訪中してからの両国の歩みを冷静に見れば、納得するはずです。
そしてアメリカの経済崩壊は、自ずと中国経済を道連れにするはずです。
ついでに、アメリカの寄生によって生きながらえてきたイギリスやカナダも、ある程度追随するのは確実だと思います。
ただでさえ長期不況と政治的混乱の渦中にあるEU諸国も、多大な影響を受けることは間違いありません。
ロシアに関しては、おそらく既に「アメリカなき世界」の覇権を虎視眈々と狙っているのではないでしょうか。
しかし、ロシアも現在の戦争で疲弊し切っており、すぐに動ける状態になるとは思えません。
そこで我が国の話が出てきますが、こればっかりは予想がつきません。
なぜなら、日本の政治を牛耳ってきた製造業主体の企業団体がどの程度の影響を受けるか、アメリカの息のかかった政治家や官僚が、どの程度ダメージを受けるかによると思うからです。
また、アメリカがどれだけ本気で、日本を「道連れ」にしようとしてくるのかもわかりません。
私は前述の増田さんの受け売りが多いのですが、やはり「米国債の売り崩し」か「円キャリー巻き戻し」を現象として起こすことで、日本がかの世界帝国に引導を渡すことができると思います。
日本に不動産バブルを仕掛け、バブル後の30年に円安を押しつけることで日本を叩き売らせ、今の貧しい状況を作り出した米国。
80年前、降伏することがわかっていた日本に新兵器の「原爆」を落とし、その威力を実証する代わりに15万もの尊い人命を奪った米国。
果ては、幕末の混乱期を利用して南北戦争払い下げの兵器を売りつけ、その後軍事大国として育て上げた米国。
私は、そろそろこの腐った因縁を断ち切ってもいいのではないか、と思います。
増田さんの本から教わったのですが、文明史において世界の覇権を握る国は、前時代に植民地だった国となる法則があるそうです。
アメリカが覇権国である以前はイギリス、長年イギリスはフランスの属領であり、フランスの前身フランク王国はかつてローマの一部でした。
もし日本が世界覇権を握るとしたら、アメリカのように強権的な支配を行うでしょうか。
私はそうは思いません。世界の諸国と平等に付き合う、奉仕的な枢軸を形成していくと思います。
「大和」の精神を持つ我が国が、いつまでも外国の真似をしているだけで終わるはずがないのです。
