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2026.03.26

「AI革命」ならず

「AI革命」ならず
2026.03.26

楽太郎です。

 

2月初旬、私は唐突に「AIバブル崩壊が始まった」と発言してから、これまでAIバブルの「本丸」と言うべき米国金融業界、とりわけ「プライベートクレジット」を巡る問題を取り扱ってきました。

本ブログの読者の方でも、S&P500指数に見られる米国株式市場の活況と米国経済統計の底堅さ、またアナリストの強気見通しと比較しても、かなり信憑性が乏しいという印象に感じられたはずです。

 

MicrosoftやGoogle、NVIDIAやOpenAIなどの大手ハイテク企業を筆頭にした天文学的な開発投資、これらの企業群に常に張りつく不正会計疑惑も一向に明るみにされず、やはりこのまま「AI革命」が起こるのではないかと感じられたかもしれません。

 

ただし日常生活で頻繁に目にするチャット型生成AIも、自分が使うにしては「面倒くさい」と感じるレベルまで浸透しすぎてしまい、むしろ使用頻度は着実に下がっているという方が現実感覚に近いでしょう。

まして「AI」と名のついた新製品を見る機会も薄れ、かつてのネットインフラやスマホが普及した時のような劇的な変化に反して、「AI革命」が今まさに起こっているのかすら訝しく感じるのも無理のない状況です。

 

ところで先日、Bloombergからこんな記事が出ました。

OpenAI、動画生成AI「Sora」アプリ終了-ディズニーとの提携解消へ

 

米OpenAIが、実在する人物や著作権のあるキャラクターすら出力可能な動画生成アプリ「Sora」を、サービス開始から約6カ月でサ終することにしたそうです。

近年、雨後の筍のようにリリースされた美少女ソシャゲに匹敵するコンテンツ寿命の短さです。

一体、何があったのでしょうか。

 

記事によると、AI製品のラインアップを簡略化する方針の一環であり、今後は新AIモデル「Spud」やロボティクスに重点を入れていくそうです。

これに合わせて、Soraと業務提携を行い「ミッキーマウス」などのキャラクターを生成AIに出力可能にすることを公式に許諾していたウォルト・ディズニーとの提携も解消される見込みとのことです。

ディズニー新CEO波乱の船出、AIとゲーム投資で誤算-Sora終了は痛手

 

奇しくも、日本の小学校の卒業制作で描かれたミッキーマウスに「著作権侵害」を指摘した上で削り取らせ、ミッキーがAK47を持って子供たちを血祭りに上げている画像がXに大量投稿されてもニコニコしていたウォルト・ディズニーが、皮肉なことに提携先からハシゴを外された形になったようです。

しかも買収したEAの新作「Fortnite」も軒並み不評らしく、何となく最近は特にコンテンツ関連でついていないように見えます。

 

実は最近、Metaのオープンソース戦略取り止めや、Amazonの AIコンテンツマーケットサービスが投資家の期待を集めなかった件など、生成AIを取り巻く状況は大きく様変わりし始めています。

マイクロソフト、AI戦略を転換-Copilotの「迷走」に終止符へ

 

この報道では、Microsoftが半ば暴力的に実装してきた「Copilot」に関する開発方針を完全に転換することにしたそうです。

Microsoftに係るエンジニアの間では、Copilotの開発が複数のチームに分断され「まるで13種類のCopilotがある」かのようで疑義があったそうで、まあぶっちゃけ言えばコレがCopilotの期待値を押し下げている最大の要因でしょうが、この度ようやく統合されることになったようです。

 

この記事で興味深いのは、これまで日常使いの「一般消費者」とBtoBを念頭にした「企業」向けの二通りの戦略を取っていたそうですが、その中間層である「ヘビーユーザー(プロコンシューマー」に焦点を当てることになりそうだという点です。

つまり一般消費者による使用頻度、少なくとも課金効率には目処を立てた形となっており、企業向けにしろ思わしくないことから、一般ユーザーの中でも課金効率の高い層と、中小規模事業体のニーズに合わせた戦略に向かうことが示されています。

 

言わばライト層の消費者にはCopilotのウケが悪く、対して「企業向けの経営戦略」は「SaaSポカリプス」の発端とも言われている、アンスロピックの「Claude」に端を発した破格値のAIカスタムツールに押されている状況と言えるでしょう。

今、生成AI業界の収益システムに関する方向転換は、顕著に見られるようです。

企業向けソフトも「まず試す」時代に、AI普及で契約の短期化加速

 

アンスロピックの「Claude」に加え、先日AmazonのAWSも同じようなサービスを開始するという報道がありました。

この記事では、企業がソフトウェア企業との長期契約を打ち切り、アンスロピックの低価格サブスクを利用した独自開発アプリを活用することで、ソフトウェア業界のBtoB契約が減少することへの懸念と、廉価版生成AIアプリの売り込み競争の激化で短期契約が増加する傾向について述べられています。

 

この「生成AIの低価格化」という状況に拍車をかけているのは、一般ユーザーの食いつきの悪さと企業採用率の低さ、またアンスロピックのような画期的な廉価版生成AIの登場だけではないように思えます。

AIエージェント「OpenClaw」急拡大、中国で熱狂と警戒の理由は

 

アメリカは一応中国を「仮想敵国」としていますから、中国に生成AIの技術開発競争で敗北すれば、米国はおろか世界に未来はないくらいに思っているはずです。

そんな中国がDeepSeekなどハイパースケーラーに引けを取らない性能の最新型モデル、しかもオープンソースの生成AIを(安全性は抜きにして)どんどんリリースをしている状況ですから、「タダ」に勝つためには「値下げ競争」をしなければならなくなっている可能性があります。

 

ここで米国AI開発業界が「安全性無視」の中国製の無料生成AIに太刀打ちするには、逆に「安全性」や「安定性」で差別化を図らねばならないはずですが、生成AI開発において「コンプライアンス」という根本問題が疎かなまま普及が進んだことで、おそらくこの方針を取ることは不可能でしょう。

第一、国防省との契約で「安全性」を盛り込もうとしたアンスロピックでさえ、強力なAIBOT対策ツールをすり抜けるスクレイピングBOTをネット中に拡散しています。

 

そうした「無許諾学習(実際はコピー)」を「フェアユース」と強弁し、各国の行政や裁判機関に圧力を掛けて「無罪化」してきたのが米国ハイテク業界です。

中国企業が自分たちがやってきた開発方針にオブラートを包まないだけで、実態としての本質は何一つ違う部分はなく、現にMetaはこうしたオープンソース戦略を最近まで取っていました。

この「機械学習」のために、トレントなどで流れている割れデータや内部流出データまで学習元にしているのは周知の事実です。

 

そして、特に経験や知識の集積のある専門家ではなく、セミプロでもカスタムAIツールでアプリ開発が可能であるとすれば、技術の「陳腐化」はよりAIアプリの価格競争を激化させ、低価格化に陥るというループからは逃れられないでしょう。

だからAIアプリ開発業者と企業との契約の短期化というのは、単に「低価格競争の現れ」と見た方が妥当です。

 

どんどん陳腐化が進む生成AIアプリにおいて、アドバンテージとなる部分があるとすれば「独自性」になるのでしょうが、各企業の事業に最適化したAIアプリを複数の事業者と比較検討するより、社内にAI部門のエンジニアを一人か二人ほど常駐させて、アンスロピックなどのサブスク契約だけ結ぶ方がコスト削減に繋がるはずです。

「誰でもできる、どこにでもある」というのは、ビジネスにするには非常に分が悪い性質があるのは否定できないでしょう。

 

そして「無料だから使っていた」という消費者の割合が多ければ多いほど、課金や料金の値上げに対するハードルは高くなります。

おそらくOpenAIの「Sora」は、ホビーとして遊ぶ分には良かったのだけれど、ユーザーが収益化するにしてもYouTubeなどの動画投稿サイトに大量投稿する以外の用途はなく、また業務に利用するにしても「データセット」に黒すぎる学習素材が用いられていることもあり、個人事業者ならまだしも企業が事業に組み込むリスクは想定以上に高かったということだと思います。

 

これは動画学習元だけでなく、どの生成AIでも著作権や肖像権、プライバシーのあるデータを取り込んでいることが明白である以上、まともな法令遵守の態度を示す事業者にとって利用に対するリスクが高すぎるのです。

それならまだしも、ダークウェブで流れている個人情報や犯罪画像や映像、児童ポルノなどのSCAMが学習されているのも事実です。

 

ゆえに、これが「商売にならない」という方が真っ当な世の中とも言えます。

こうしたコンテンツ系生成AIに比べ、テキストベースのLLM型生成AIは数十兆という単位のトークンを学習しているため、だいぶ「希釈」されて学習元のデータが確率的に再現されないので、学習元が「バレにくい」という性質もあります。

シェイクスピア作品の本文が、高い割合で再現が可能であることが証明されています。

 

こうした権利関係の曖昧さだけでなく、「誰にでもできる」という自動化ツールのメリットは、逆にプライオリティを最も毀損しうる部分であり、この分野で「低価格競争」が起きているのは良くない兆候です。

かつてのMicrosoftもGoogleもAmazonも、他事業者に対する「差別化」とシェアの獲得によって急進してきた企業ですが、同じような開拓側であるOpenAIやアンスロピックが独自サービスでの優越ではなく、低価格と横並びの機能差で競争している状態は業界の見通しの暗さを象徴しています。

 

もちろん、中国企業含めてこうした有象無象の生成AI開発企業、またはプライベートエクイティ業界からユニコーンが誕生する可能性はありますが、こうした巨大なアーカイブ、学習データベースを保有しているのは主にハイパースケーラーであり、この「学習競争」は純粋に資本力に匹敵します。

現在、既得権を有する生成AI業界トップのOSを新規参入者が超えることは構造的に難しく、そうでなくてもEUやカリフォルニア州のAI規制法案により新規シェアの開拓は絶望的な状況となっています。

 

私の目からは、生成AI業界が「規制」と「低価格競争」の循環の中で「共食い状態」に入っており、AIの将来性の見込みというよりは事業における近々の資金繰りに関する問題の方が深刻に見えます。

おそらく「Sora」のサ終もそれと無関係ではないでしょうし、投資や債券発行で事業拡大を図るOpenAIの収益性の低さは、投資業界でも眉を顰められている部分でもあります。

 

こうした事業としての見通しに暗雲が立ち込めているOpenAIは、同じく未上場企業であるアンスロピックが国防省との取引で、中国ファーウェイ以来になる政府関連契約の締め出しを食らった隙を狙い、政府との契約を進めています。

米OpenAIのCEO、国防総省との契約は急ぎ過ぎた-追加条項を協議中

 

Amazonと同様、通常の一般消費者向けサービスでは採算が合わない事業をしているOpenAIにとって、何をしてようが莫大な政府補助金が入る国防省との契約には旨みを感じるはずです。

この記事で興味深いのは、OpenAIが国防省との取引で「AIの安全利用」に関する枠組みの放棄を政府から求められていることに関し、「AIが米国内で米国民を監視する用途に利用されないこと」を契約に盛り込もうとしているとされますが、逆に読めば「AIが米国以外の国民を監視し、収集した情報を米軍が利用すること」が追認されている訳です。

 

まあ、ぶっちゃけ私たちのMicrosoftアカウントやGoogle、Amazonに紐付けられている個人情報も流れ流れてイスラエル政府に握られていることは既成事実なのですが、有志の方は「ニンバス計画」でググって頂けると良いかと思います。

それどころか、日本人がChatGPTに向けた質問の内容や傾向も、アメリカに軍事利用されうる可能性が示唆されています。

 

米国政府とアンスロピックが交渉していた契約内容には「国民のAI全監視システム」と「AI自律兵器の製造」が盛り込まれており、アンスロピックはこれに「良心」が咎めたとされます。

 

これを「アメリカは同盟国だからむしろ安心」と捉えるべきか、トランプ大統領を「誠実で聡明な人物」と認識できるかは個人の判断にお任せします。

ただ、アメリカが始めた関税戦争でもイラン戦争でも、日本に手厚い「配慮」を感じたことがあるか、という点には注意を付け加えたいと思います。

 

さて、これまで「AI革命」の旗手になりうる企業について述べてきましたが、この業界に対する懸念を「投機対象」にしたスワップも誕生したというニュースです。

AI関連のデフォルト不安に着目、JPモルガンが新CDSバスケットを提供

 

これはAmazon、Microsoft、Meta、Google、Oracleのハイテク5社で構成され、「SaaSポカリプス」で昨今言われているソフトウェア企業としてのリスクより、「AI開発企業」であることに着目しています。

これらの企業が巨額の借り入れを増やし続けることで、投資家からの懸念が生じていることから「赤と出るか黒と出るか」に賭けたバスケットとされます。

 

おそらく、強気を貫くハイパースケーラーに対する投資家心理の不安定さを反映しており、良くないニュースも出ています。

スーパー・マイクロ創業者を米当局が訴追、Nvidia製半導体密輸の疑い

 

これは2024年時点でMicrosoft、Metaに続きNVIDIAの売り上げ貢献度第3位(ちなみに4位はGoogle、5位はAmazon)のスーパー・マイクロの創業者の男女2名が、販売禁止措置を受けている中国にNVIDIA製GPUを組み込んだサーバーを「密輸」したとして訴追されたという報道です。

「訴追」とあることから元は別件で提訴されていたのでしょうが、スーパー・マイクロ社は2024年に調査会社ヒンデンブルグ・リサーチから不正な会計処理に関する財務レポートを出された後、証券取引委員会へのK10書類(有価証券報告書)の提出を延期しまくったという経緯があります。

 

2024年度にはスーパー・マイクロがNVIDIAと約50億ドル(7500億円規模)の取引を行なっていたと推定されており、この内訳はスーパー・マイクロ創業者の訴訟において当局から調べ上げられているはずです。

スイスにある国際決済銀行(BIS)がNVIDIAに関する会計処理に対してメスを入れており、スーパー・マイクロの不正会計や創業者の密輸に関する調査報告もBISに共有されていると思われます。

 

スーパー・マイクロはGoogleやAmazonよりもNVIDIAの取引量が多く、データセンター設備への実装を仲介しているようです。

まあ、創業者二人のGPU密輸は個人的な「小遣い稼ぎ」の可能性はありますが、これまで年間売上150億ドルとされるスーパー・マイクロのどれくらいが正当な取引であり、現段階では不正会計がどの程度かは当局だけが知るという状況かもしれません。

 

こうしたAIブームの中心部で起こる疑惑は、当然投資業界にも波及します。

ソフトウエア株に再びAI脅威論、アマゾンが自動化ツール開発との報道

 

この記事では、アンスロピックの「Claude」やOpenAIが「Frontier」といったカスタムAIツールをリリースする流れを受けて、Amazonも同系統のツールを開発していると報道されました。

記事によると、ソフトウェア企業の個別銘柄だけでなく、iシェアーズ拡大テック・ソフトウエア・セクターETFは年初来で23%下落したとのことです。

 

またオルタナティブ系投資会社アレス・マネジメントやアポロ・グローバル・マネジメントなど、プライベートクレジット関連の懸念も取り沙汰されており、財務状況のリスクも考慮されているようです。

ソフトウェア企業のBtoB向けの事業モデルが AIカスタムツールで脅かされる危険は確かにありますが、全てのソフトウェア企業が一般コンシューマー向けの収益モデルを排除する理由にはならず、また生成AIを組み込んだ独自システムを採用するサービスは、誰もが任意に組み上げられる生成AIアプリに対してアドバンテージを失うとは考えにくいです。

 

また、Adobeなど制作ツールを開発するソフトウェア企業はプロコンシューマー向けのサービスで不動の地位を築いており、企業向けの契約で生死を分けるような事業モデルではないはずです。

その上、PhotoshopのAPIを生成AIで代替できる段階まで開発が進んでいるとは到底思えませんし、それでも将来的にAdobeが消滅する期間まで「投資する価値がない」かというと、そんなこともないでしょう。

 

AIカスタムツールの「ブーム」に便乗した「AI脅威論」は穴が多い議論だと思いますし、いかにAIカスタムツールが画期的で優れていると言えど、完全にソフトウェアが代替されると判断できるレベルまで検証がされたとは思えず、またそうであっても完全に置換されるのはまだ先の話でしょう。

従って、やはり私はこうした論法は金融メディアや投資業界の「方便」であって、実際は企業利益の大部分は幹部報酬に抜かれてフリーキャッシュフローが圧迫されているとか、債務の借り換えが多すぎて財務状況が火の車だとか、そんな内情の企業ばかりにプライベートクレジット系融資が集中していたということではないでしょうか。

 

では、ソフトウェア企業群に多額の融資を行なってきたプライベートクレジット会社、事業開発会社(BDC)の現状も見てみましょう。

事業開発では大手のブラックストーンが、運用資産830億ドル(約13兆2000億円)の「BCRED」において、2月の運用成績がマイナス0.4%だったそうです。

プライベートクレジット軟調、ブラックストーンのファンドが月次損失

 

また別のニュースでは、オルタナティブ投資会社KKRが運営するプライベートクレジットファンドでは、投資適格が「ジャンク級」となり、格付けが引き下げられたそうです。

理由としては「資産の質の継続的な悪化」とされ、収益性やポートフォリオの価値が競合他社に比べて低いとのことです。

 

オルタナティブ投資会社のアレス・マネジメントが運用する、資産107億ドルのファンドでも顧客から11.6%の解約請求があり、対して払い戻しを発行済み口数の5%に抑えたという報道があります。

記事の解説では、投資銀行ロバート・A・スタンガーによると、非上場の事業開発会社への投資は先月に前年同月比で約43%減少したとされ、やはり2月のプライベートクレジット業界は波乱の月だったようです。

 

投資銀行モルガン・スタンレーの報告では、直接融資の債務不履行(デフォルト)率が今後8%まで上昇する見通しであり、これには業界向けローンの「万期の壁 」を今年以降の2年で20%の企業が迎えるとされます。

今、イラン戦争で利回りが上昇している最中、金利支払いだけでなく資金繰りに窮する企業が増加しているはずで、ただでさえ金利支払いの先送りや債務の借り換えで賄っていると思われるこれらの企業が、果たして無事にこの壁を乗り越えられるのでしょうか。

 

おそらく、「SaaSポカリプス」の本質はこれらの企業のサービスがAIカスタムツールに脅かされる可能性よりも、一企業として「万期の壁」を乗り越えられないことへの危惧の方が大きいように感じます。

さて、プライベートクレジットを巡る問題を取り上げると、決まって「デフォルトによって想定しうる損失は資産規模に比べて小さく、プライベートクレジットの仕組みからしてシステミック(全体的)ではない」とよく言われます。

果たして、そうでしょうか。

 

プライベートクレジット問題は深刻だが、08年金融危機ほどではない

この記事では、トライカラーやファースト・ブランズ、イギリスのMFSやトリコロールなどのプライベートクレジット系金融会社の破綻は単純な「不正行為」であり、犯罪的側面もあり一般化しうるものではない、と先に述べられます。

また国際金融危機でのCDOの学びから、アレスやブルーアウルなどが行ったように払い戻し上限を5%程度に留め置く措置によって、急な償還請求での破綻も制度的に起こり得ないとしています。

 

もっとも、と記事では続きます。

投資家が引き出し制限を意識して常に上限まで引き出そうとすることでファンドが資金を切り崩すことで対応するうち、投資家に対するリターンは低下し、それがさらなる解約を招き、また資金調達のために優良資産から売却して問題のある資産を残すようになれば、ファンドのリスクは高まり撤退を早めることになるだろう、と述べられています。

そして、最近の償還請求の急増を見る限り、この負の連鎖はもう始まっている、と。

 

これに対する「対応策」には担保の厳格化があり、プライベートクレジット会社が資金調達する際の「二重担保」などを防ぐため、ブロックチェーンで金に色をつける対策が提案されています。

これはプライベートクレジット会社に融資する側の金融機関の対応策であり、トライカラーやファースト・ブランズのような低信用ローンを扱うプライベートクレジット会社の良心はさて置いて、という感じがします。

 

これらの破綻企業は、言ってみれば「モラルハザード」を起こした末の不正行為を伴っており、ゆえに一般化することはできず、これに対策が可能であるならば銀行などが融資のハードルを上げるくらいだ、と言っているようなものです。

この低信用ローンを取り扱う企業群のモラルハザードが懸念されている中で、それはどうしようもないという風にも読み取れ、良心に頼るしかないという印象すらあります。

 

しかも、融資にブロックチェーン技術を用いるにしても、これからやっても今ある多重担保には適用できないでしょう。

また今後2年に渡る「万期の壁」は別問題であり、「鬼が出るか蛇が出るか」という状況は変わらないわけです。

 

そして、これらの企業のデフォルトによって想定しうる損失は資産規模に比べて小さく、プライベートクレジットの仕組みからしてシステミックではないという件に関しては、最大25%の債務不履行が発生しうるのはソフトウェア業界単体であり、その他に事業開発会社(BDC)はIT・通信サービスやヘルスケア業界への融資額も多く、先の破綻事例は自動車系サブプライムローンや住宅ローンの分野で起きていることを留意せねばなりません。

融資の貸出し先が企業体か個人かという点を加味しても、世界の融資総額50%以上はノンバンクによるものであり、その融資総額は日本円にして4京円以上であり、米国のプライベートクレジット市場1兆8000億ドル(約260兆円)に比べて全体としての潜在力は比較になりません。

 

つまり「どこからどこまで」という線引きが難しい低信用向け融資の輪が、世界規模で見たらどういった複雑性を持ち、各銀行や投信会社のエクスポージャーになりうるのかを正確に把握するのは不可能に近いのではないでしょうか。

また金融業界の一般認識として、こうした債務不履行のリスクが顕在化するのは破綻間際か直後と言われ、そこまで現象化しないと同業者にも実態がわからない、というのが正直なところでしょう。

 

JPモルガンのダイモンCEOが「ゴキブリが一匹いたら他にもいる」と述べたとされますが、ファースト・ブランズやMFSが「たまたま紛れ込んだゴキブリ」であり、それ以外にゴキブリは存在しないというのも、また「存在しないという証明をしろ」というのも悪魔の証明となり、まともに扱う議論ではないにせよ、順当に考えて「他にもあり得る」というスタンスで考えるべきでしょう。

 

そうした場合、損失規模が大きいか大きくないのかも、実際に起こってみなければわからないのでしょうが、たった数社の不祥事でこれだけの資金流出が起き、銀行や投資会社の存続すら危ぶまれる状況は、投資家たちもそれほど金融機関の体力に自信を持てない理由があるからだと思います。

私は、ブルー・アウルやアレス・マネジメントの払い戻しに向かった投資家心理は過剰反応ではなく、リスクを考慮したガチの対応ではないかと考えています。

 

そして、もしこれらの事業開発会社が何かしら躓くことがあれば、これらのBDCの融資先にあるAIデータセンター投資も宙に浮く可能性があります。

データセンター建設プロジェクトには電力会社や不動産、建築業やコンピューター機器関連業、AIチップ製造業者やAIサービス提供者、この事業に伴うワラントの発行体なども絡んで来るため、一つの頓挫がプロジェクト全体への大ダメージになりかねません。

 

この期に及んで、ハイテク大手のAI部門の不採算事業化に加え、NVIDIAの循環取引疑惑までバーゼルの国際決済銀行に調査され始めているのですから、どこを切り取っても現行路線で突き進むのは厳しそうです。

ただでさえ「AIブーム」というのは、半導体需要とNVIDIAのGPUが支えてきたようなものであり、逆にここまで来て「AI革命」の旗手たるキラーアプリが未だに誕生していないことの方が問題と言えるのです。

 

もし、これら一連の「AIブーム」がプライベートエクイティ業界、またはIPO市場を活性化させるための「方便」または「投資キャンペーン」の一環として意図的に起こされたものだとしたら、鳴物入りで登場するAIベンチャーが最大瞬間火力の後に風船のように萎んで消えていくのも、OpenAIやアンスロピックが未だに営利企業化を実現できず未上場に甘んじているのも、この分野の現状を把握する上で一貫した説明ができるのです。

 

この「キャンペーン」は金融業界のみならず半導体製造業、不動産や建築、エネルギー業界やIT業界、政府関連団体にも大きな経済的メリットがあります。

この「旨み」の前では、生成AIが実際に「技術革新」を伴うかは別として、天文学的なR&D投資をすれば多少使えるものになるだろうという腹づもりでしょうが、現時点ではEVやブロックチェーンと同様に、成功モデルが確立されていない産業技術の一つです。

 

だからこそ、AI関連投資は新機軸のAIツールが発表されるたびに投資業界にパニックが起こる風潮となっていますが、一般消費者はこれらの現状を至って冷静に見ていることは言うまでもありません。

メディアやSNSではとかく喧伝されがちな「AIブーム」も、一時期話題になった動画生成AI「Sora」が半年で姿を消すくらいには、先が見通せる世界ではないのです。

 

AIに関しては、もう少し冷静にことの成り行きを見守る必要があると思います。

いずれ人類史において「AI革命」が起こり得ないという断言はできませんが、それが仮に起こるにせよ、現行の生成AIのフレームワークでは「不可能」であることを述べて、今回は終わりにしたいと思います。

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